中本治義さん【後編】

中本治義さん【後編】

前編ではビターズが出来るまでに中本さんが経験した様々なお話を伺いました。 後編では、中本さんの生活スタイル、現在のアート活動、また今後の展望等についてお伺いします。 [ 聞き手 M:森大佑(シンクメディア) / T:次山嘉一(ネクスティー)]
- お金というもの -
N:昔からちょっと極端すぎるくらいにお金を貰うのが苦手なんです。請求書を書くのがイヤだし・・。 何か申し訳ないって思ってしまうんですよね。 金儲けをしたいと思うし、お金に対しての欲は本当はあるんだけど、 ある程度普通に生活出来ていると欲しく無くなっちゃうのかな。究極の面倒くさがりやなのかも知れません。
前にある成金社長がココに来て、「俺なら金かけてああするなぁこうするなぁ」って いかにも成金が考えそうな事を言ってくれるのですが・・そうじゃないんだよな・・。 例えばそういう人は自分と同じことは絶対に出来ないって思いましたね。
M:お金をかければいいってものではないんですよね。自らの手で作っているからこそこの雰囲気が出ているのだと思います。 お金の匂いがしてしまう。そうなってしまうと幼い頃に想像していた、夢を描いていた空間ではなくなってしまう気がします。
N:そうですね。この空間には“隠れ家”だったり“基地”だったり子供の頃の想像や願望が大きく影響していると思いますね。
M:幼い頃も何かを作っていたんでしょうか?
N:学校で図工の授業があったでしょ?そうゆうのでは学校で自分の作品が選ばれて毎年展覧会に出展されていましたよ。 例えば電池とモーターを搭載した車を作る機会があって、ボディーを装飾するんだけど 銀玉付けたり色々やってガチャガチャにする。そうすれば評価が高いって分かったんだよね。(笑) 中学の美術の授業で写生をした時も、みんなは忠実に一生懸命何か描いてたけど 自分はシュシュシュっとワケの分からない絵を描いて(爆笑) あの頃から分かってたんだよね。何をすれば先生が評価するかを。(笑)
T:中本さんは“コツ”と言っていますが、その頃から中本さんの“カッコイイと思う世界観”が 明確に出来上がってきていたのかも知れませんね。
「 何が残るか 」
Nakamoto_Photo_05 N:こういう生活をしてると、みんな「いいですね。凄いですね。」と言ってくれるんだけど、 自分は何をやっているのだろうって今でもしょっちゅう考えるんです。 今でも娘とは仲が良いけど、結婚していたのは一時だし、一家の大黒柱になれなかったことへの コンプレックスみたいなものがあるのかも知れません。 財産がある訳でもないしこのまま行ったら自分には何が残るのかって。
M:ご自身では何を残したいと考えているんでしょうか?
N:自分でも分からない。 普通はローン組んで家買って、家庭を築いて幸せな生活をする。 こういうことが日本ではできるでしょ。 それをやらなかったから今勝手なことができるのだろうけど、 こんな道を歩んでしまったけど良かったのかなってやっぱり葛藤しているのでしょうね。 周りには羨む人も多いけど、自分には自分なりにみんなと違うこんな道に来てしまったなぁ という気持ちがあるんですよね。
M:でも僕はこういう生き方を見せて貰っている事が、もう“残っているもの”なのかなと思います。 色々な選択肢の中で何を面白いと感じるかは人それぞれだと思いますけど、 やり方によっては色々な人生を歩めるという事を教えて貰えてる気がします。
そういうことって身近で見たり感じたりしないとなかなか伝わらないものじゃないですか。 頭では分かっていても動けなかったりする。それが凄く近くにあって目に見えて体感できると 希望とか夢とか理想とか、そういう形で力を与えているのかなって思います。
N:そうですか。自分では分からないですね。でもね、ここは寝る時以外は全部コンクリート。 コンクリートって冬は寒いし疲れるんですよ。 アメリカ人だって家の中はコンクリートじゃないし、やっぱり体に良くないと思うんですよ。(笑)
M・T:(笑)
- 素晴らしい日々だ -
T:普段の生活スタイルは?
N:だいたい前日に翌日の予定は決めておきますし 朝ダラダラとは絶対にしないですね。だいたい7:30に起きてコーヒーをいれて 夏は表で飲みながらネットでニュース見て、ゲンタと散歩に行ったり、 暖かい日はヨットで、みなとみらいまで缶コーヒー飲みながら海の散歩というのが日課です。
M:最高のスタートですね。
N:そういえば!明日は60代チョイ悪オヤジ達とゴーカートの耐久レースがあるんですよ! 60代のゴーカートチームが5グループ集まるらしくて真剣にレースをするんです。 普通60歳にもなれば家でお茶かなんか飲んでるでしょ。ゴーカートやるなんて笑っちゃいますよね。
T:エネルギーに満ち満ちていますね。負けてられないですわ~。
N:それと最近は熱海のホテルをリノベーションしていて毎週泊まりで行ってます。 若衆を二人連れていって、温泉入って、夜も豪勢に騒いで食事して、一人ずつ部屋を取って、 バイト料だって普通の手間賃より高く払っているから若い連中が凄い喜ぶんですよ。 たまに「これだけメシ食わせたんだから手間から差引くよ!」とか言う人いるでしょ?僕はそうゆうのは絶対にしない。 遊び半分ではないんですけど、こういう性格が経営者には向かないでしょうね。
T:それ以上に中本さんの魅力に惹かれているのだと思いますが、 とにかく周りにはいつも多くの若者がいますよね。
N:一昨日はね、オープンを手伝った焼肉屋の試食会に若いのと行ってきましたよ。 そうそう。この間はナポレオン党のパーティーがあって当時の不良達が200人位集まって凄い面白かったんですよ。 (※ナポレオン党:伝説の横浜不良のグループ。小金丸峰雄氏がナポレオン党フラッシュバックパーティーを行った) 横浜は本当に面白いことが多い所です。
- 現在進行形 -
T:現在手がけているプロジェクトについて、もう少し聞かせてもらえますか?
Nakamoto_Photo_05 N:さっき少し話した熱海のホテルはほぼ完成してね。 四部屋を好きなように使って良いということで、間仕切りをしてシアタールームを作ったんです。 今は年末のライティングオブジェショーに向けて作品作りをしてます。 (2009年末、丸の内で行われるイベントで石井竜也氏も参加。その斜め前に作品を出展した)
T:本牧にCHIBOWさんとクレイジー剣さんと一緒に出しているお店がありますよね?
N:そうそう、あそこには自分の作った作品が置いてあるんだけど、 そのお店の外観写真が山手線内のポスターにも採用されたんだよ。 それから川崎FMで番組を作る事になって来年の2月から放送する予定なんですが それもFM川崎の方からアプローチがあってさ。また何か生まれるかもしれないですね。 それと近日中に山口県へ行く予定もあります。瀬戸内海の島に父がいてそこが最高にいい所なんです。 だから自分も瀬戸内海の島にヨットを留めてのんびりしても良いかな。 最後はそんなことやっているかも知れませんね。
T:最終的なところは自給自足というか、静かな所で自由気ままに?
N:そうなるんじゃないかな。好きな場所だから将来はそこに行っても良いと思っているんですよ。 近い将来やりたいことがあって、何年後にリタイアするか分からないけど、 自分のやりたいことが出来なくなったら田舎に引っ込むかな。
- ツイているね?ノッているね? -
M;それにしてもここは色んなものがありますね。これだけ集めるのは大変だったんじゃないですか?
Nakamoto_Photo_13 N:俺、本当についてるんですよ。例えば50インチのテレビが欲しいなって思っていると 「うちの50インチので良かったらあげますよ」って友人が言ってきたり。 このスピーカーJBL4323という、当時二台で150万位した凄い名機なんですが、たまたま友人のお父さんがくれたり。 先日、一番気に入っているハーマンミラーの椅子がイベントの時に盗まれて とても気分が沈んでいたのですが「僕の使っているのだったらあげますよ」って友人がくれたんです。 不思議なんだけど昔からそういうところもツイている。

波乗りやっている頃はビートルに乗っていたんですが、 車に戻るとブロックの上に乗っかっちゃってタイヤがないことがありまして…。 あの頃そうやってタイヤを盗むのが流行ったでしょ。
ある日、偶然停まっているワーゲンが何となく見覚えのあるホイールをはいているのを見つけて、 あ、これ絶対俺のだって。自分のものって何となく分かるでしょ? そしてそのワーゲンの前で警官呼んだら、持ち主が慌てて走ってきて 「暴走族から買った」と言ってトボけているんです。 その後、そいつの両親が示談してくれって自宅に尋ねてきて、結果、幸運にも盗まれたタイヤが戻ってきたんです。 後々聞いたらやっぱりそいつが盗んだって白状したらしく・・ その頃は若かったから頭に血が昇りましたけどね・・。
他の車も盗まれたことがあって、その時も友達が見つけてくれて戻ってきたりとか。 あと高校生の時、オートバイの二人乗りでオフロードを駆け回っていると ガードレールの無い所で崖に落ちちゃったことがあって。 後ろに乗っていた友人は瞬間的にオートバイから飛び降りたらしくて 自分だけオートバイごと切り株だらけの凄い急な崖の下まで落ちたんです。 転がり落ちる体をどうにか止め、ハッと後ろに乗ってた友人のことを思い出して 必死に崖を駆け上がって辺りを見渡すと、血だらけでうずくまっている友人を見つけたんです。 一歩間違えたら大変な事になっているはずだけど自分は無傷だった。 本当に自分は恵まれていますよ。恵まれていないのは女性だけ。(笑)
M:ツイている人とそうじゃない人の違いってなんだと思いますか?
N:分からないですね。持って生まれたものじゃないかな。 昔、凄い仲の良いヤツがいて、アタマが良くてカッコ良くて 金沢の能登の方へツーリングへ出かけたりヤツとは本当に仲が良かったんです。 あんなに良い男が27歳でいきなり事故死してしまい・・ そいつの亡くなる何日か前にお墓の塔婆を(ご先祖様の供養のために墓石の後ろに立ててある木製の板) 引っこ抜いて振り回して、とても罰当たりなことをしたらしいんです。 そいつは凄い礼儀正しくてそんなことをするようなタイプじゃなかったのになぁ。
また、親戚に凄くデキの良い男がいて、建築士で頑張っていたのにいきなりガンで死んじゃった。 彼はあんなに一生懸命勉強して何も悪いことしてきてないのに、 自分みたいなのが好きなことやって、生き残って。不思議だなって思います。 若い人達へ、ためになるようなことを言いたいんだけど、自分でも分からないんですよ。
M:中本さんから若者に対して言いたいことはありますか?
Nakamoto_Photo_11 N:若い人に「中本さんみたいな生活がしたい。どうやったら出来るのか?」って良く聞かれますが分からないんです。 それを的確に言えないんですよね。偶然が重なってたまたまこういう生活が出来ているから。 本当に全てに恵まれているんですよね。
T:そういった色々な出逢い、キッカケ、縁を作れるのが普通じゃないと思いますよ。 もしかしたら本当に超ツイているのかも知れないですけどツキだけじゃそれを演出できないと思うんですよね。
N:みんなが自分の事を可愛がってくれる。目をかけてくれる。 自分はそんな魅力がある人間じゃないってことを自分が一番分かっているんですよ。 でもきっとビターズがあるから自分を表現できて、だから何も言わなくてもそれをみんなが認めてくれて、 自分のことを目に掛けてくれているのかなって思います。 誰でも見てもらえる自分の“中身”を表現できたことが成功の要因なのかなと思います。
T:夢を持つ若者にアドバイスをお願いしてもいいですか?
N:それは人から言われることじゃないと思います。自分の中から湧き上がってくるのではないでしょうか。 確かに金になる仕事はたくさんあると思うけど、 全く面白くなかったり、自分の仕事じゃないと感じたり、その時に決断できる事が大切なんじゃないかなぁ。 これをやりたいと思ったら、そのためにはこれだけお金が必要だから、そのためには今これを我慢しよう。と行動したり、 人の仕事まで自ら進んでがむしゃらにやったり。この辺で人って分かれるんじゃないでしょうか。
T:そういった決断を出来ない人も多いですね。
「 自分の人生は結局全部、自分が決めているんですよね 」
N:やっぱりね、人の生活ってその人の環境に大きく影響されるんですよね。 今の自分があるのも元を正せば・・娘の保育園の→友達のかっちゃんの→お母さんの妹。 その妹に自分が手を出して(笑)その妹がアンティーク屋やってて・・ それがキッカケだから、娘がかっちゃんと友達にならなかったら全部今は無いと思います。 だから面白いですよね。最近はここで色々な人に出会って、その人からまた新しいキッカケが生まれて、 そこからは自分の選択でしょ。こう考えると自分の人生は結局全部、自分が決めているんですよね。 今まで色んな枝があって、こっち行くかあっち行くかで、人生が変わって また新しい枝があって、たまたま自分は良い選択をしてきたんじゃないかなと思います。 人と知り合うってことは大事なんじゃないかな。引きこもってたら何にも無いですからね。 そういう自分もたまに引きこもるけど(笑)
- 夢 -
T:将来的にやりたいことがあるとお聞きしましたが、お話できる範囲で教えて頂けますか?
N:海際にデカイ200坪位の平屋の倉庫を借りて、そこの中にはバーがあったり、 ロフトになっててライブができるようになってて、こっちの方にビリヤード台があって、ピンボールがあって、 こっちで古着売ってて、アンティーク小物売ってて、そこに遊びにくれば倉庫の中は色々なことが楽しめる。 よくその辺にある小奇麗なアミューズメントパークじゃなくてもっとカッコイイ空間をやりたいんですよね。 少しずつ協力者も増えてきて盛り上がっている状況です。
T:明確ですね。今聞いただけでも、やることいっぱいですね。 中本さんは人との「出逢い」とか「繋がり」の偉大さを教えてくれました。 そのエネルギーが圧縮され、ビターズはそれを大きく爆発させる場所になったのではないかと感じました。
N:子供の頃の自分の隠れ家っていうか、そういう世界観が自分の根源なんです。 これからもそういう表現を突き詰めて行きたいです。
M・T:今日は本当にありがとうございました。また遊びに来ます!
スタジオビターズ bitters メタルアーティスト

中本治義

スタジオ ビターズ WEBサイト

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